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長嶋洸インタビュー
このチームのために。挑戦を続ける覚悟
21長嶋 洸
地元クラブで培った経験を生かし、チャレンジリーグやなでしこリーグ、WEリーグで実績を重ねてきた長嶋洸。ノジマステラ神奈川相模原ではセンターバックとして最終ラインを支え、守備の要としての責任を果たしながら、さらなる成長を追い求めている。これまでの歩み、そして未来への覚悟を語る。
「ボールが見えなくなるまで続けていた」

「小学校が終わるとランドセルを家に置いてすぐにグラウンドへ戻り、友達とボールを蹴っていました。チャイムが鳴っても帰らず、暗くなってボールが見えなくなるまで続けて、親が迎えに来ることもありました」
1993年生まれ、埼玉県朝霞市出身の長嶋は、地元のアズマFCでサッカーを始めた。土日はチーム練習に励み、平日は学校のグラウンドで日が暮れるまでボールを蹴る日々を送っていた。
当時のチームはそれほど強くはなく、朝霞市や和光市、新座市の大会では勝ち上がるのが容易ではなかった。それでも、高学年になると地域の選抜チームに呼ばれ、浦和方面で試合に出る中で、他のチームとの実力差に圧倒されていた。
中学進学時、母が見つけてくれた浦和レッズレディースジュニアユースのセレクションに挑戦し、100人あまりの応募者の中から見事合格。「母には本当に感謝しています」と当時を振り返る。
2006年、長嶋は浦和レッズレディースジュニアユースに加入。練習場のレッズランドまで自転車で30分かけて通い、サッカーに本格的に打ち込んだ。中学2年では背番号10を背負いボランチとしてプレーし、U-18の試合にも出場。中学3年時には、U-15の大会でセンターバックの欠場を急きょ埋める形で、そのポジションを任された。
「もともとは前のポジションを希望していましたが、ビルドアップの楽しさを知って、ボランチやセンターバックが自分に合うと感じるようになりました。トップチームの選手を間近で見られる環境で、個人戦術やチーム戦術を学べたのは大きかったです。ステラもそのような環境ですが、こうした環境は、育成年代の選手が成長する上で本当に大事だと思います」
中学3年時、長嶋は全日本女子ユース(U-15)選手権大会に出場し、決勝戦でチーム初の優勝に貢献するゴールを決めた。
「センターバックとして先発しましたが、試合終盤にボランチに上がり、終了間際のシュートが決まって、本当にうれしかったです」
2009年、浦和レッズレディースユースへ昇格したが、期待どおりの結果は残せなかった。高校3年時にトップチームの練習に参加した際には、選手たちとの力の差を痛感したという。
「矢野喬子さんは別格で、プレーがずば抜けていました。今は指導者として活躍され、矢野さんの指導を受けたチームと対戦すると、選手たちの理解度の高さを実感します。熊谷紗希さんは桁違いのポテンシャルを持っていて、もし自分がトップに上がったとしても、試合に出るのは到底無理だと感じました」
「試合に出ることでしか得られない経験がある」

2012年、長嶋は日本体育大学への進学を決めた。浦和のトップチーム昇格が難しい状況の中、将来的に指導者や教員としての道も考えていた。サッカーを続けながら教員免許を取得できる環境が最適だと判断し、この進路を選んだ。
「大学2年生のとき、皇后杯関東予選でステラと対戦した試合が印象に残っています。チャレンジリーグでの対戦もありましたが、関東予選でステラが優勝し、本大会へ進むのを目の当たりにしました」
日体大での4年間、サッカーだけでなく、厳しい規律の中で人間性も鍛えられた。「仲間に支えられ、どんなに大変なときも乗り越える力がついたと感じています。社会に出ても、ここまで理不尽なことはない。」と大学時代を振り返る。
2016年、長嶋は中学・高校時代を過ごした浦和レッズレディースに加入。なでしこリーグ1部での成長を志したが、主力選手たちとの差を痛感する日々が続いた。主にセンターバックとして出場を目指し、時にはサイドバックも務めた。
「大学時代は個々の能力を生かすスタイルでしたが、レッズでは試合の流れを読む力が求められ、ベテラン選手の気迫がチームの強さにつながっていると感じました」
2019年、さらなる挑戦を求め、なでしこリーグ2部のニッパツ横浜FCシーガルズに移籍。2年間、試合に継続して出場する中で、実戦を通じて成長を感じることができた。
「試合に出ることでしか得られない経験があると、あらためて実感しました。ミスも成功も重ねる中で、試合に出ることの大切さを再認識しました」
当初、チームはどちらかというと楽しむことを重視する雰囲気が強かったが、次第に結果を求める姿勢へと変化していった。
「ちょうどベテランの選手が抜け、自分たちが加わったタイミングでした。チームの雰囲気も変わり、やるべきところはしっかりやるようになり、少しずつ結果を意識するチームになっていったと感じます」
「このチームのために自分にできることがある」
2021年1月、長嶋は大宮アルディージャVENTUSに加入した。地元でプレーできる喜びに後押しされ、すぐに加入を決断したという。WEリーグ誕生とともに新たな挑戦の日々が始まった。「スタジアムの雰囲気も良く、初年度からたくさんの方が応援に来てくださり、本当にありがたかったです」と当時を振り返る。
リーグ戦では、加入1年目に14試合、2年目に11試合、3年目に17試合に出場。チームは9位、6位、7位という成績を残した。2023年12月のアルビレックス新潟レディース戦では、待望のWEリーグ初ゴールを挙げた。
「セットプレーなどでずっと惜しい場面はありましたが、ようやく点を取れて良かったです。ステラに入ってからも、しっかり得点できるチームにしていきたいという思いは変わりません」
2024年5月、大宮との契約満了が発表され、翌6月にステラへの加入が決定。当時の心境について、長嶋はこう語る。
「引退も考えましたが、最初にステラから声を掛けていただき、自分を評価してもらった以上、このチームのために自分にできることがあると思い、加入を決めました」
ステラ加入後、長嶋はセンターバックとしてフル出場を続け、大賀理紗子と共に最終ラインを支えている。日体大時代は、長嶋が4年生、大賀が1年生という間柄だった。
「選手一人ひとりが自分の強みをしっかり発揮し、それを試合の中で生かすことができれば、ステラはもっといいチームになると思います。理紗子はポテンシャルが高く、最初から細かく詰める必要がなかったので、すごくやりやすいですし、安心して任せられる部分も多いです」
オフの日は、チームメートと過ごすことは少ないが、後輩に誘われて食事に行くこともある。最近は「鎌倉に行こう」という話で盛り上がった。
「抹茶のおいしいお店があると聞いたんですが、本当に行くかどうかは分かりません(笑)。オフの日はパン屋さんやコーヒー屋さんに行くのが好きで、ふとしたときにおいしいコーヒーを飲みたくなりますね」
3月1日、リーグ再開初戦は大宮とのアウェイゲーム。かつて3シーズンを過ごした古巣との対戦だが、今はステラの一員として、勝利を見据えてピッチに立つ。
「大宮は順位が一つ下なので、絶対に勝ちたいです。地元の知り合いも応援に来る予定で、アウェイながらホームのような感覚で戦えそうです。ステラはボールを奪った後の切り替えが速く、カウンターでの得点も狙っているので、自分の良さをしっかり発揮していきたい。奪ったボールを素早く前線に出して、守から攻への速い展開を目指します」
後期に向け、長嶋はさらなる飛躍を誓う。
「前期は1勝しかできなかったので、後期はもっと勝ってたくさんラインダンスをしたい。目標の5位以内に入り、最後は皆さんと笑顔でシーズンを締めくくりたいです」

プロフィール
長嶋 洸
NAGASHIMA Hikari
1993年12月2日生まれ、埼玉県朝霞市出身
アズマFC - 浦和レッズレディースJrユース - 浦和レッズレディースユース - 日本体育大 - 浦和レッズレディース - ニッパツ横浜FCシーガルズ - 大宮アルディージャVENTUS - ノジマステラ神奈川相模原(2024-25シーズン~)
(文=大西徹・株式会社アトランテ)